■はじめに
昨年に引き続き富士を舞台にしてユースキャンプを開催させていただきました。この合宿のテーマは『世界を目指す若者に刺激を与える』ことです。この合宿を一つのきっかけにして、オリエンテーリングを通して世界に挑戦する若者を一人でも多く育てたいというのが根底にある思いです。今年は40名以上の参加者でユースキャンプを行いました。その全員が大学生で、主にインカレに向けて技術力と体力を高めるヒントを得る場としてユースキャンプを活用してくれたようです。多少主旨は異なりますが、それでも彼らのオリエンテーリングに対する気持ちに火をつけたことには変わりありません。まずはインカレを最大の目標にし、そしてその先にある世界を目指して彼ら、彼女らが活躍してくれることを祈るばかりです。
簡単ではありますが、今年もユースキャンプの報告をしたいと思います。この報告書を読んでユースキャンプに興味を持ってくださった方は是非来年のユースキャンプにお越しください。学生だけではなく社会人の皆さんの参加も心よりお待ちしています。
ユースキャンプ07チーフ 高橋善徳
■ユースキャンプ概要
- ○主催:
- NPO法人M-nop
- ○期日:
- 2006年1月13日(土)〜14日(日) 1泊2日
- ○場所:
- 静岡県富士宮市、富士市
- ○宿泊:
- 静岡県立朝霧野外活動センター
- ○参加費:
- 6,500円(宿泊費+トレーニング代)
- ○参加者:
- 岩手大学(8名)、岩手県立大学(4名)、東北大学(4名)、宮城学院女子大学(2名)、筑波大学(4名)、慶応大学(4名)、相模女子大学(1名)、静岡大学(6名)、京都大学(3名)、京都橘大学(1名)、奈良女子大学(1名)、みちの会(1名)ぞんび〜ず(1名)
- ○コーチ:
- Rob Plowright、尾上秀雄、鹿島田浩二、加納尚子、志村直子、高橋善徳、紺野俊介、加藤弘之、番場洋子、朴峠周子、千葉光絵、石山佳代子
- ○トレーニング
メニュー - 1日目(スプリントレース3本、フィジカルトレーニング)
- 2日目(コンパスO、リレートレーニング)
- ○講義
-
- 番場洋子さん(世界を目指す魅力について)
- 加藤弘之さん(オリエンテーリングが速くなるためのトレーニング)
- 朴峠周子さん、千葉光絵さん、石山佳代子さん(JWOC、ユニバーの魅力)
- ロブ・プロウライトさん(JWOC2007について)
■合宿1日目
1日目のメニューの最大の目標は国内トップ選手の走りを観察し、自分の技術向上に役立てることです。参加者にはまずスプリントのノーマルなコースを走っていただきました。その後同じコースをNT選手が走ります。参加者はその間、山の中で自由に選手の動きを観察することが出来ます。なんと追走も可能でした!
NT選手が走り終えた後、参加者とNT選手にはディスカッションをしていただきました。
「スピードにはついていけるけれども、あのスピードでナビゲーションをするにはどうしたらよいのですか」「整地はいつしているのですか」「地図を見る頻度が意外と多い」など参加者は初めて見る山の中での選手の動きに目を輝かせていました。レース中NT選手に会うことはあっても冷静に観察することは出来ません。このメニューが今回一番参加者に評判の良かったメニューでした。
ディスカッション後には、ロングレッグ主体のコース、ショートレッグ主体のコースをそれぞれ走り、参加者は自分の課題をそれぞれ確認していました。
オリエンテーリングのトレーニングのあとにはフィジカルトレーニングを行いました。このトレーニングは、筋力トレーニングとクロスカントリー走をミックスした練習方法で非常に運動強度が高いものです。 下図の■で筋力トレーニング(腕立て伏せ10回、腹筋20回、背筋30回、バービー10回)を行った後、赤の点線を全力で走ります(右回り)。男子は7セット、女子は5セット行いました。NT選手もこういうトレーニングをする機会は少なく、翌日筋肉痛になっている選手も少なくありませんでした。
入所式を済ませ、いよいよ講義が始まりました。この朝霧野外活動センターには約200人収容できる視聴覚室があります。普段の合宿では得られない大学の授業のような緊張感の中で講義が行われました。
1番目の講義は番場さんの「Do orienteering with passion!」でした。現在はアジアのトップ選手として有名になったセミプロオリエンティアの番場さんですが、学生時代には気持ちの波も大きく、いくつかの挫折があったそうです。そんな競技生活の経験から番場さんは「強くなるとき=強い思いがあるとき」だと言い切ります。Passionを持つには?Passionを維持するには?というテーマで自身の経験からお話をしてくださいました。合宿後のアンケートでは「あの番場さんにもモチベーションの下がるときがあるのだと知ってほっとした」という言葉もありました。モチベーションの波を上手く捕らえながら出来るだけ高く保つ努力をする工夫が大切なのかもしれません。
2番目の講義は加藤さんの「オリエンテーリングが速くなるためのトレーニング」でした。トレーニングをすればよいというのはわかるけれども、何をやればいいの?今やっているトレーニングで本当に速くなるの?そう思っている方は多いと思います。加藤さんは自身の研究の立場から得た知識を教授してくださいました。
- 持久力をつけること
=脂肪を効率よく燃やす能力を高めること
→低強度のトレーニングを数多く - より高強度で動くためには
=耐乳酸性の能力が必要
→高強度のトレーニングをこなす
という2つの柱でトレーニングすることの重要性を解説したあと、海外のトップ選手のトレーニングについて解説していただきました。また、トレーニングをたくさんすることが世界で活躍するための必要条件であり、またそれを行うためには工夫が必要であるということでした。
3番目の講義は朴峠さん、千葉さん、石山さんによるJWOC&ユニバーの魅力でした。就職1年目に世界大会を経験した大変さや、仕事とのバランス、世界大会を目指した理由などおのおのの経験から貴重なアドバイスをいただきました。発表の間、昨年のユニバーのDVDが流され、参加者たちは始めてみる海外の大会の様子に興味を惹かれていました。
最後の講義はロブさんによるJWOC2007の情報です。今年のJWOCはロブさんの地元オーストラリアで行われます。参加者の中にはJWOCを目指せる年齢の人は少なかったのですが、全員がロブさんが見せるオーストラリアの地図と写真に釘付けでした。日本では、山というと広葉樹や針葉樹などすぐにイメージできます。しかし、オーストラリアの地図を見た後現地の写真を見るとそれがイメージと全くかけ離れた光景であることに参加者一同驚きました。ユーカリの木がまばらに生え、荒涼としたはげ山は日本の山とは全く異なります。このように海外のテラインでは日本の特徴物の常識が全く通用しないところもたくさんあるのです。講義後には番場さんからO-Ringen(スウェーデンの5日間大会)の話も飛び出しました。
ロブさんは最後に昨年の世界選手権でシモーネ・ルーダーを破ってスプリントの王者に輝いたハニー・オルソン(Hanny Allston)さんについて話をしてくださいました。ハニーさんは現在22歳で、今回ユースキャンプに参加してくださった参加者の方と同年代です。今回の参加者のなかから世界を目指して頑張っていく人が出てきた場合、同じ舞台で戦うことになのです!考えただけでも興奮します!
■合宿2日目
合宿の早朝は朝練です。今回のメニューは前日スプリントレースを行ったテラインでの鬼ごっこでした。鬼はNT選手で逃げるのが参加者です。20分の鬼ごっこですが、走り回ったのはどちらかというとNT選手でしたが。逃げるときにはダッシュを行いますので効果的に行えばインターバルトレーニングになるのではないのでしょうか。
場所を移して、午前中は丸火自然公園のマップを使いコンパストレーニングを行いました。このトレーニングはウインドOとかコリドアOとか言われるトレーニング方法です。海外で多用する直進の精度を高めるためにコントロール周り以外は白抜きになっている地図を使って約500m程度直進をします。このトレーニングについては日本でもかなり普及してきた感があります。参加者も非常にうまくこなせていました。しかし、やはり女子学生や1年生にはとても難しいメニューです。このような基本技術をきちんと習得することが実はとても大事なことなのです。わざわざ静岡でなくともこのトレーニングは出来ます。多少登りがきつかろうが、「みちの分岐」→「みちの分岐」という特徴物を使っても十分に練習が可能です。大切なのは工夫なのです。
コンパストレーニングのあとは、リレートレーニングを行いました。とても運動強度の高いトレーニングです。今回はロング、ミドル、ショートという3つのコースを用意し、それぞれに参加者を割り振って男女一斉スタートで行いました。男子は30人強、女子は10人強の集団になります。コースも良く考えられていて、全員がリレーのシチュエーションで緊張したレースを行うことが出来ました。最後は参加者、コーチ全員がくたくたになった練習でした。
こうして、2日間の合宿が終わりました。北は岩手から京都まで全国からたくさんの参加者が集まった合宿ですが、今回もとても充実したものであったと思います。アンケートでは、年2回(インカレ前)にユースキャンプを開いてもらいたいという意見が多くありました。参加した学生達はたくさんのやる気をこの合宿を通して得たと思います。それと同時にコーチである私達も、参加者の熱い気持ちから自分達もやる気をもらいました。来年もさらにパワーアップしてこの合宿は開かれると思います。運営者一同熱い気持ちを持った参加者の皆様を心よりお待ちしています。どうもありがとうございました。

ユースキャンプ07 参加者運営者一同 2007年1月14日(丸火自然公園にて)
