イギリスワールドカップ遠征記+フィンランドトレーニングキャンプ

0.遠征にあたって

 遠征を企画した目的は大きく言って2つある。1つは昨年度世界戦に出た経験が少なかっ たため、なるべくほかの国の選手と競うという場を設けたいと思ったことがひとつ。それ と、質の高いトレーニングの機会を確保したいというのがひとつであった。日本において のトレーニングは今年の世界選手権を見据えた上で、それ自体にすごく大きな意味がある ことはわかっているのだが、それを度外視してまでも体験する必要性をうすうす感じて いた。心のどこかでは、自分に対する甘えを断ち切りたいという思いもあったのかもしれ ない。

 どう表現していいかわからないが、昨年度から自分のパフォーマンスは落ちてきてい た。自分のことをよく言うわけではないけれども、泳ぎ方を忘れてしまった魚のようにも がいていた気がする。どうしても気持ちの一線を越えられない。トレーニングはしている つもりではあってもそれはいわゆる自分の自己満足のトレーニングに過ぎず体力向上のレ ベルアップできるトレーニングであったかといえば、怪しいものであった。それがわかる のは、やはり大きな大会が終わってからでありそのひとつが全日本選手権大会であったの だろう。自分は冬から春のシーズン毎年体調が思わしくない。それは、オリエンテーリン グをはじめてからずっとのことなのだが、太りやすい体質もあるだろうし、追い込んだト レーニングを減らしてしまうからなのかもしれないし、とにかくこれからも課題だろう。

 話はずれてしまったが、今回のワールドカップでは体力的にがんがん追い込むというよ りは、今できるレベルで最高のオリエンテーリングをすればよい、という気持ちで臨ん だ。そしてこの遠征中オリエンテーリングを外国の選手のレベルに混じって行うことによ り質の高い練習をするのだという思いを持って臨んだ。

1.[トレーニング]日記

4月28日:
イギリスに到着する。早速モデルイベントへ向かう。テラインは全体的に走り やすい。Aの表記には割りと幅があると感じる。地図で見て現地にないことはあるが、現 地にあるものを地図で拾うのは割りとらくだ。オリエンテーリング的には日本でやってい るように「コンパスを使って大きな地形に飛び込んで対応させて進む→コントロール周り はしっかり読図」が有効と感じる。コンパス直進は非常に重要だ。
[テラインまでジョグ20分、OL47分、宿舎までジョグ20分、平均心拍数148、登り341m]

4月29日:
あさ軽めのジョギング。夕方からスプリント予選が始まる。場所はギルド フォードの大学の構内。学生宿舎の複雑な組み合わせがオリエンテーリングを難しくして いた。まるで迷路の中を走っているようで集中力をきらせるとたちまち数秒のミスを犯し てしまう。自分としては、まずまずの走り全体的に集中できていた。1つの小さいミス と、ルートチョイスが悔やまれる。しかし70点のレースは出来た。予選を通過するために は、トップが13分半で走るコースを 14分半で走ることが必要だ。対トップ比で言うと110%を 軽くきる。男子はトップとのタイムの差が小さいとはいえ、なかなかつらい世界だ。でも 収穫はあった。この手のテラインは自分は強い。やはり細かくて細心の注意が必要なテラ インは最高だ。ぎりぎりの緊張感がぞくぞくさせる。
[朝:軽めのジョグ30分、夕:ウォーミングアップ20分、レース16分、ダウン10分]

4月30日:
リレー競技。スピードに対する自信がない自分にとってこのレースも、オリエ ンテーリングをしっかり行うことが目標であった。このワールドカップのレベルから言っ ても1走がトップ集団で帰ってくる可能性は低い。集団から置いていかれた中で追いかけ ようとして自分のリズムを崩したほうが良くない。 1レッグ1レッグを集中してこなそ う。それがこのレースの目標であった。全体的にレースはコントロールされていたと思 う。1つ地図の表記に戸惑いミスをしたところを除けば、比較的良いレースだったと思わ れる。確かに1走を走った松澤さんや鹿島田さんに比べれば、劣るタイムであるけれども 現状を考えれば妥当な結果であったと思う。驚愕したのは宮内さんのパフォーマンスだ。 第2集団で宮内さんが現れたときは、さすがにぞくぞくした。こんなシチュエーションが 生きている間に見れるなんて勇気がわいてくる場面だった。
[ウォーミングアップ、ダウン30分、レース67分、レースの平均心拍数184登り255m、トップ比132%]

5月1日:
ロング競技。今回自分が一番照準を合わせていたのがこの競技だった。世界レベ ルの大会で120分間集中してレースをこなした経験が最近少なく、世界選手権でロングを 走ることになった今、そのような経験を出来る最後のチャンスといってもいいからだ。世 界選手権を想定して、カーボショッツとカーボショッツを溶かした水を準備した。日本の 夏の世界選手権での2時間に及ぶレースでは給水が重要なポイントになることは間違いな い。レースは序盤からマイペースにすすめた。いや、そのスピードでしかできなかったと いっていいだろう。スピードを上げられるほど体が出来ていない。悔しいがそれが今の現 状だと思う。オリエンテーリングはとてもよかった。後半平らなところで数分のミスをし たものの、良いレース。ロングで自分としてはそこそこの走りが出来たことに対しての喜 びはあった。しかしそれは同時に今のままでは端にも棒にもかからないレベルであるとい うことを認識したことになった。今のままのレベルだったらたとえミス率0%のレースを したって予選通過は出来ないだろう。そのことは、イーキスとの面談でも話題に上った。 もっとトレーニングが必要だ。それも意味のある…。対照的な松澤さんとイーキスとの面 談を聞いていてそう思った。同じ勝負をする土俵にさえ上がっていないんじゃないかな。 そう感じた。イーキスと今後のトレーニングについての面談を少し行った。
[レース1時間57分、平均心拍数176、登り606m、トップ比128%]

5月2日:
スプリントBファイナル。走ろうか走るまい(ジョグで流すか)決めかねていた が、結局走ることに決めた。それはマックスではなく、軽いジョグの延長のつもりだっ た。しかし、走り出したらつい追い込んでしまった。テラインは典型的なパークオリエン テーリングであったのでスピードが勝敗を分ける。ロングの疲れもあってか(昨日はオフ だった)鹿島田さんに20秒程度完敗。疲れを取るために電車で早めに宿舎に帰ることにす る。結構歩いたので疲れた。昨日刺さったとげのところが気になっていじる。まだ、取れ ていない気がする。
[レース16分、平均心拍数176、30分ウォーキング]

5月3日:
ミドル競技。アップをしているあたりから足がちくちく痛む。左足のひざあたり に針で刺激を与えられているような痛み。アップのジョグさえ出来なくなるときがある。 走れば治るだろうと思って走るが、痛みは取れない。不定期に襲ってくる痛みなので、も しかしたらタイツにとげがあるのかと思って見てみるがない。サポーターをしたり、テー ピングをしたりするが、痛みは引かずいやな感じを引きつりつつレース開始。テラインは 自分が得意とするタイプの細かい部分があるテライン。序盤からひざが気になりだし、一 気に登ってこれから微地形へというところで痛くて走れなくなる。その後ごまかしながら 動き続けるが、痛みは不定期に訪れる。集中力を欠き現在地も把握できなくなってその後 は、途方にくれながら走ったり歩いたりを繰り返してようやくゴールへ。不思議な痛みだ けに、どう説明していいかわからない。とりあえず宿舎に戻りひざを冷やして休む。安全 ピンでとげが気になった部分を見てみるが見つからない。ミドルも選手として目指してい るだけにショックを隠しきれなかった。バンケットもそこそこに宿舎に戻り、フィンラン ドへの渡航準備をはじめる。フィンランドでも走れなかったらやだな。
[レース53分、平均心拍数165、登り168m]

5月4日:フィンランドへ移動。耐え切れなくなって病院へ行く。いろいろあったが、イー キス&タルと田島さんのおかげできちんと医者に見せることが出来た。とげが刺さった場 所にはもうとげは見つからないらしい。何も心配することはないと太鼓判を押されクラブ ハウスへ戻る。依然いたみは引かない。だいぶ痛くない姿勢もわかってきたが、走るとい たいのはどうしようもない。病人らしく今日は静かにしていよう。
[運動なし]

5月5日:
フィンランドでのロング競技。2003年の長期遠征のときにも出場したプリズマラ スティットに出場する。フィンランドの国内ランキングイベントの選手権クラスを走らせ てもらえることになった。昨日の医者の助言を信じ、テーピングをしてマイペースで走る ことにする。コースは割りと簡単でミスもなく 96分で12キロを走りきった。キロ8分程度 だが、トップは68分で走っていた。ひざの痛みも大きくなく回復傾向であることが感じら れた。帰ってきて、山を軽く散歩がてら走りに行った。クラブハウスのすぐ隣はテライン であるのでいつでもトレーニングが可能だ。本当に恵まれた環境だと思う。飯能も考えて みればそうだった。これからは毎日だってオリエンテーリングできるぞ。たのしみ。山を 走っているとまた、痛みが襲ってきた。まだ、回復には時間がかかりそうだ。イーキスも 足のことを気遣ってくれている。良くなってきているといったものの、本当に良くなって いるのかどうか自分でも自信がない。
[レース96分、平均心拍数取れず、登り419m]

5月6日:
午前中は、クラブハウスから15キロ程度離れた山へテクニカルトレーニング。山 にコントロールはないが、3人1組でオリエンテーリングをして正しい場所を探し出す。非 常にレベルの高いマップコンタクトのトレーニングであった。途中でコンタクトレンズを 1つなくし、かつ足の状態も良くないのでトレーニングは半分でカット。非常に悔しい。 気持ちも凹み気味。午後は、近くの山でスプリント系のトレーニングを行う。松澤さんが 組んでくれたコースでレース形式でやるという。レース形式になるとついつい走ってしま うので気をつけていたが、前半調子よくこなせたためやはり追い込んでしまった。
[午前中テクニカルトレーニング1時間程度、平均心拍数140、登り180m、
午後スプリントレース、全体で40分、レースは27分、平均心拍数165]

5月7日:
昨日の午後のトレーニングのせいかどうかはわからないが、朝から足の調子は良 くない。今日はフィンランドでの最後のトレーニングで50キロくらい離れた場所でミドル のレース。足は痛かったが、レースになれば何とか走れるはずという思いもあり、準備を すすめる。テーピングをしてスタートに向かうものの足はどんどん痛くなる。今日は棄権 しようかなという思いも頭をよぎり会場に戻るが、再びテーピングを重ねまたスタートに 行ってしまった。自分は馬鹿かもしれない(笑)。レースはスタートから足の痛みに我慢し て走る始末。予定通りミスをしてさえない前半。そして中盤に差し掛かったとき、足を突 き刺すような痛みが感じられ走ることが出来なくなった。ジョグも出来ない痛みは、ミド ルのとき以来かもしれない。結局レースは途中で切り上げて、ゴールへととぼとぼ歩いて いった。インタビューを受けるが情けない言葉しか出ない。
[ミドルレース:途中棄権80分、夕:散歩30分]

2.評価

 ワールドカップに出たことにより、自分の中で悶々としていたものが少し軽減された。 結局はトレーニングをやるしかない。オリエンテーリングも攻めるしかない。そういう単 純な部分を再認識できた。どんよりとした雲が一気に晴れた感じだった。ほかの道はな い、選択肢がないのだ。だからそれをやるしかない。そういう気持ちになった。

 トレーニングの大まかな流れについては以下のようにこなす。
完全回復期(5月2週):身体をリセットするために休む。足も完全に回復させる。
量重視期(5月3週から6月1週):2セッション/日動く。マップトレーニング(例えばOL)の量も増やす。
質重視期(6月2週から7月1週):スピードトレーニングなど負荷の高いトレーニングの割合を増やす。量は減らしても良い。マップトレーニングは集中してこなす。だらだらOLはやらない。
第1テーパリング(7月2週):参考レースに結果を出すため、テーパリングを行う。
質重視期(7月3週):2セッション/日動く。ただし、ハードなトレーニングは行わない。
第2テーパリング(7月3週から8月1週):世界選手権で結果を出すため、テーパリングを行う。
 とりあえず、この方法を続けたいと思う。