PWT2005レース結果総括(上海・蘇州・金華・杭州)
今回2度目の参戦となるパークワールドツアー(通称PWT)は昨年の反省(蘇州での1レース)をふまえて以下のように目標設定を行う。
(1) ロングレッグで対トップ比が高い(130%以上)→スピード改善→120%以下で走る
(2) ショート・ミドルレッグでのパフォーマンスは良い→同じようなパフォーマンス→120%前後
(3) 全体の成績は(1)(2)が達成できれば10位台前半は可能
今回は日本選手が多く参戦し、男子もナショナルチーム強化選手の加藤が参戦していたので彼との比較をしながら評価をしていきたい。まず、それぞれのレースについて簡単に評価し、杭州までのレースのすべてのレッグについて、対ベストラップ比を使って評価する。
1.上海 トップMartin Johansson 15:38 高橋18:23(117.6%)、加藤18:38(119.2%)
コース表示は3180mであったが橋を使って川を越えなければならないレッグが多く実距離は5キロ近くあったと思われる。非常にフラットなコースで走るスピードが求められた。若干のミスはあるもののほぼ完璧なレースが出来たと思われる。しかし、簡単なレッグで脱出方向を誤るといった場面が多かった。PWTなどのような世界レベルの大会に出ると、コントロール周りのちょっとしたもたつきがベストラップとの顕著な差になってしまう。この点は非常にエキサイティングなことだし、日本では得られないものだと思う。国内で加藤はパークOのレースにあまり出たことが無いらしいが、自分が思っていたよりも差がつかないことに少し驚いた。思えば、加藤の「レースを完全にコントロールしようとする姿勢」は、初めから明確だったのかもしれない。
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| 青空の下元気にスタート | 大胆なルートチョイス |
2.蘇州 トップOystein Kvaal 12:51 高橋P1、加藤14:46(114.9%)
昨年と同じ蘇州のアミューズメントパークを使ったレース。前回のレースの反省を生かし、短いレッグでノーマルなパフォーマンスを行うことを目標とするものの、スムーズに走り続けたいという欲求が強く7ポで大ミス。前半6ポまで加藤に15秒差をつけてリードしていたが、ここであっさり逆転される。その後もミスを取り返さなければという焦りのため簡単な短いレッグでミスを連発する。このレース最大のキーであった12-13でルートチョイスミスを犯し、1分後のロシアのIlyaに追いつかれてからは彼を使おうと決意するも、地図への意識が希薄になったため直後のレッグを飛ばしてペナ1となってしまった。速いレッグはたくさんあるのだが、それ以上に短いレッグで10秒以上の大ミスをしていることが加藤との差である。可能性は十分に感じるのだがそれを結果として残せないことが非常に歯がゆい。
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| ちょっとしたミスが命取り | 地図ではわからないが人は多い |
3.金華 トップOystein Kvaal12:36 高橋15:18(121.4%)、加藤14:33(115.5%)
場所を金華に移してのレース。テラインは川沿いの小さな公園でこれと言って特徴は無い。非常にノーマルなパークOのレース。レース後の実感はとてもよかった。しかし、ほかの選手と比べて思ったよりタイムが伸びていない。14秒差で中国の選手にも負けてしまった。確かに後半失速した感はあるがレース全体としては良かったはずだった。あとでよくよく調べてみると、地図上で立入禁止の色で示されている花壇(植木?)が実は微妙に立入禁止の色ではないことがわかった。自分が避けて通っていたルートをほかの選手はまっすぐ突っ切っていたのである。ショックは隠しきれなかったが、ひとつ勉強したと思ってあきらめるしかないだろう。加藤は前半から私の背中を追うレースだったようだがこの日も快走し115%の走りを見せた。
11-12も迂回してしまった
4.杭州 トップMats Haldin 13:15 高橋15:34(117.4%)、加藤14:58(113%)
今回はじめてのフォレストタイプのパークOが行われた。公園部分で頻繁に方向を変える・細かいナビゲーションを課すなど自分の得意とするタイプのレースであった。レースは前半から果敢に攻めたためか10ポまで加藤よりも5秒速いタイムで走ることが出来た。しかし10-11のレッグで脱出方向を誤り、結局30秒程度のミス。その後は良いレースをするものの17位。加藤は前の選手に追いついてリレーさながらのレースをして14位でフィニッシュした。パークOのようなレースでは選手が高速ナビゲーションを行うため、フォレストタイプのようなレースになると、とたんに荒れたレースとなる。日本人にとってはありがたいことだが、こういうレースでしか他の選手との差を縮められないのは少し悲しい所。
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| 結構頑張りました | こういうエリアは本当に気を使う |
5.全体を通して
PWT杭州までの前レッグについて対ベストラップ比をプロットしてみた。ただし、高橋については300%越えのレッグもあるため(笑)、180%まで軸をとった。横軸がベストラップタイムであり、縦軸がそれに対する高橋・加藤の割合である。

このグラフから大会を通してのそれぞれの傾向がわかる。加藤についてはショート・ロングレッグのほとんどすべてのレッグで110-130%の位置に点がプロットされている。非常に安定したパフォーマンスを発揮したことがわかる。荒れたレースは一つも無く、すばらしい結果であったといえる。対して、高橋のプロットを見ると非常に荒れているのがわかるが1分25秒以上のレッグにおいて120%以下で走れている(一番右はルートチョイスミスによるもの)。これは、当初の課題であったロングレッグでのスピードアップが成功したことを示しているだろう。しかし、走ることに意識をシフトした結果、ショート・ミドルレッグで精彩を欠き結果として満足なレース結果を得ることは出来なかった。また、110%以内のラップが(ショートレッグではあるが)8つあり評価できる。試しに、10位の選手のデータを同じようにプロットしたところほとんど全ての点が110%以内に収まった。トップ比110%以内のレッグを何本出せるかはいい指標になりそうだ。
今回のPWTについては結果を求めたものではなかった。ただ、スピードアップを課題として掲げ、スピードトレーニングを行い追い込むレースが出来たことは評価できる。確かに多少荒れたレースはあった。しかし、自分が目指さなければならないのは丁寧な完璧なレースではなく、多少ミスがあろうがそれでも速いというスタイルだ。そうでなければ、デンマークはおろかウクライナやチェコでも目指す結果は得られないだろう。
今回の遠征を通して長期的な視野を持ってトレーニングをしていくことの重要性を肌で感じた。特に世界大会に出ると結果を求められがちだ。嫌でも結果は注目される。そのようなレースではセーフティに物事を進め結果を残すことが良いと思っていた。しかし、それだけではブレークスルーは得られない。数多くレースをこなし、失敗しても良いから攻めることが重要だと思う。そして、もし世界のトップ選手と同等なラップを出せたレッグがあったとしたら、そこから学んでいくべきだ。
自分は現在、今後の世界選手権予定についてデンマーク以降は白紙である。しかし、これから真の意味でレベルアップを図っていこうと考えるならばウクライナ・チェコなどを最終目標に置きそこに向けて計画を綿密にそして大胆に練っていくべきだろう。そういった大局的な計画の中でそれぞれの世界大会を位置付け使っていくべきだろうと思う。
6.雑感
(1)今後の世界選手権は、デンマーク・ウクライナ・チェコと大陸系のテラインが続く。それぞれスピードテラインであり結果に占めるスピードの要素が大きい。それを見据えて自分は現在スピードトレーニングをしているわけだが、今現在十分なスピードを備えた若い選手が日本にはたくさんいる。彼らを積極的にナショナルチームの合宿に参加させ、レベルアップを図らせる必要がある。必要ならば世界レベルのレースに派遣し(来年4月中国で国際大会があるようだ)経験を積ませることも必要だ。
(2)世界選手権において種目特性が明確に分かれている現在、自分に向いた種目を早めに決定し、それに対して準備していくことは以前にも増して重要である。私について言えば、確かにスプリントは好きだし国内においては良い結果を得られる。しかし、絶対的なスピードに乏しい私にとってスプリントは適性に乏しいと思う。やはりロングやミドルに適性があると考えるのが適切だ。これは、スプリントのレースを走らないことを意味しているわけではない。スプリントタイプのレースはトレーニングとして活用すればよい。
(3)現在、タイムトライアルと言えばトラックでのタイムトライアルを意味する(筑波の学生時代は筑波山登りをさしたが)。しかし、トラックでの強さと山での強さは違う。オリエンテーリングが速くなるために必要なのは明らかに後者だ。定期的にタイムを測定し、自己評価していく必要性がある。七国峠が近くにあるのでタイムトライアルコースを作り定期的にタイムを測定しよう。
(4)PWT中国シリーズ全日程して参加して感じたことがある。選手には色んなタイプがいるということ。当たり前と言えば当たり前かもしれない。すべての選手が、陽気なわけではないし、すべての選手がシリアスなわけではない。陽気で騒がしい選手もいれば、物静かで礼儀正しい選手もいる、まるで学生時代のクラスのように。チェコのDanaは意外と物静かなタイプだし読書家だ。自分のペースを大切にするタイプだし、他の人に迷惑をかけるようなことはしない。オーストラリアのBJは完全に悪がきタイプで、周りの注目を集めることを生きがいとしている。ロシアのIlyaは優等生タイプだが、ユーモアも兼ね備えている。ウクライナのYuriは騒がしい若い選手を快く思っていない(と思う)。女子選手も北欧の選手はいまどきの女の子。
(5)スプリントを走ろうと思っている選手はPWTに参戦することを勧める。世界トップレベルの選手たちとシリアスに戦える経験をヨーロッパに行かずとも得られる機会は非常に貴重だ。また、実際に走って差を経験することによってトレーニングの方針も立てやすいし、フィードバックを得る手段にも使える。レース日程は観光も含めて非常にタフだが参戦する価値は十二分にある。






