アジア冬季競技大会スキーO不派遣問題を考える

2010年9月 5日
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2011年1月にカザフスタンで開催される第7回アジア冬期競技大会スキーオリエンテーリング(スキーO)競技に、日本からは選手を派遣しない事が6月の日本オリンピック委員会(JOC)の理事会で決定された。(社)日本オリエンテーリング協会(JOA)はその後も派遣に向けJOC側へ働きかけを行っているものの、理事会の決定が覆る可能性は低いようだ。

不派遣の理由は「金銭的な問題」とされているが、それはあくまでJOC側の理由である。そしてもし金銭的な問題だけなら、JOA側がその費用を支弁すれば派遣されるということになるが、実際はそうではない。我々オリエンティア側には問題は無かったのだろうか?

IOFと日本の動きの乖離

かつてオリエンテーリングの情報誌として発行されていた『O-JAPAN』1995年3月号には、「スキーOを冬期五輪へ」というロゴマークとIOFオリンピックプロジェクトのパンフレットの和訳がスキーOの解説も含め掲載されている。IOFはこの頃にスキーOの五輪入りに向けた活動を本格化させたと言える。

そして今年の8月31日、IOFは2018年冬季五輪でのスキーOの実施を国際オリンピック委員会(IOC)に申請したと発表した。いよいよスキーOの五輪入りが現実味を帯びてきたのである。

日本でも1998年1月に、菅平高原にて国際スキーO大会が長野冬期オリンピック組織委員会の後援を受け開催された。しかしながらその後の国内スキーO人口は伸び悩んでおり、今年2月に秋田県で開催されたスキーO大会の参加者は30数名に留まっている。

昨年は北海道の留寿都で世界選手権も開催されているが、国内オリエンティアのスキーOへの感心が高まっているとは言いがたい現状である。

JOC未加盟のJOA

まず大前提条件として、アジア大会やオリンピックに出場するためには統括団体がJOCの会員である必要がある。しかしながらJOAはJOCに未加盟であり、この時点でJOCから門前払いを受けて当然と言える。

過去にはIOCが後援しているワールドゲームズが2001年に秋田で開催され、オリエンテーリングも実施された。また前述の通りIOFはスキーOを冬季五輪にという活動を古くから行っていたにも関わらず、JOAはJOCへの加盟を見送り続けてきたどころかその議論さえもしてこなかったのである。なおJOAは(特非)日本ワールドゲームズ協会にも加盟していない。大問題である。

もし2001年頃にJOAがJOCに加盟していたなら、今回のアジア冬季競技大会にも問題なくスキーOの選手が派遣されていたのではなかったのだろうかと思えてならない。

「全日本選手権」開催の実績無く

またスポーツであるならば日本チャンピオンを決める「全日本選手権大会」が年1回は開催されてしかるべきところ、日本においてスキーOの全日本選手権が開催されたことは1度も無い。なぜか?

あるJOA理事はこう話す。「スキーOも全日本大会の必要性を考えたことはありましたが、『いきなり全日本ではなく公認大会から開催したらどうか』という提案を受け、スキーOの公認大会が開催された事はあります。ただし選手側からは競技者登録の必要があり、公認料が参加費に上乗せされるなど公認化のメリットが無いとされ、以後スキーOのイベントは内々で開催されているのが現状です。」

JOAのJOC未加盟に加え、この「全日本選手権の開催実績無し」という事実はJOCの理事らに悪い印象を与えたのではないだろうか。実際に「どんなスキーOの選手がいるのか分からない」という声がJOC側から聞かれたという。

加えて日本チャンピオンを決める大会が無いことは、普及の面からも問題視すべきである。目標なきスポーツに競い合いやレベルアップは起こりえず、従って普及発展もあり得ないのである。

内々で事を進めてきた結果としての不派遣

すなわち、JOAと選手とに関わらず、我々オリエンティアがオリエンテーリング村社会内でのメリット・デメリット論に終始した結果、アジア冬期競技大会不派遣というとてつもなく大きなデメリットを被ってしまったのだ。これまでの関係者の判断は誤っていたと指摘しなければならないだろう。

これまではスキーOは内々のイベントとして楽しみ、そのイベントで日本代表を選考して世界選手権に選手を派遣できていたため、スキーOイベントの公認化や全日本選手権の開催は不必要であった。しかしアジア冬期競技大会での実施や、先日もIOFが2018年の冬期五輪での実施に向け申請した現状にあっては、もはや内々のイベントとしてスキーOを続けて行く事は大きなデメリットとなる時代に突入したのである。

JOAは何をすべきか

JOAは直ちにJOCに加入する必要がある。近年のJOAはオリエンテーリングとは似て非なるスポーツであるロゲイニングに力を入れているが、今JOAに求められているのは、4種目あるオリエンテーリングそのものに目を向け、それらの発展のために何をすべきか、あるいは何をしてこなかったかを考え、すべきことを実践する事ではないだろうか。たとえロゲイニング愛好家が増えたとしても彼らがオリエンティアになる可能性は極めて低く、ましてスキーOやMTBO、トレイルOの愛好家にはなり得ないのである。

また全日本選手権の開催も急がれる。IOFが大きく動いた今、日本でも公式な競技の実績を積んで行く事が今から必要である。選手側からすれば費用負担が増える事になるが、スキーOがスポーツとして社会的に正しく認識されるために、また普及の面から考えても選手が目指すべき目標として全日本選手権の開催は必須である。

オリエンティアは何をすべきか

JOAがJOCに加盟するとなれば金銭的な負担も必要になるが、これは我々オリエンティアが当然に負担すべき費用である。スキーOをやらないオリエンティアであっても、スキーOの選手は同じオリエンテーリングを楽しむ仲間であり、その選手が冬季五輪で世界と戦う姿を応援することはオリエンティアとしての喜びに繋がるはずである。

またスキーOを楽しむオリエンティアがより増えることも望まれる。特に学生にあってはフットOよりもスキーO(あるいはMTBO、トレイルO)の方が得意という者もいるはずであり、彼らにフットO以外の3種目に挑む機会を与える事は大いに意味があるのではなかろうか。

ただしスキーOを行うには道具を揃える必要があるが、大学OBや所属大学の所在する都道府県協会など社会人の支援が受けられればその壁は低くなるだろう。意欲のある学生は是非OBなどに支援を求め、社会人側もそれに応えていただきたいものである。

今回のアジア冬季競技大会不派遣問題は、日本の全てのオリエンティアが重大な問題としてその認識を共有しなければならない。

[posted by fyu]
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